「落とし物」 <おすすめBGM>叫ぶ詩人の会 / 東京聖夜

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 以前、某大学病院でサイフを落とした。診察を終え、お金を払う段階で、サイフがないのだから、さあ大変!自分が通った所、座った所、診察した所、探してみるが見つからず、病院の遺失物センターに行ってみるがそこにも届いていませんでした。一応、そこに遺失物扱いの届けを出し、免許証だけは仕事が休みの時でないとだめなので、書類を揃え、即、江東試験場へ。東陽町駅の階段を上がると、携帯が鳴った。女房からの電話だった。「**警察にサイフが届いているって!」という事で、急遽、**警察に向かった。
 **警察に到着し、サイフを受け取った。なんと現金もカード類もそのままで何もなくならずに届いていた。サイフを受け取る時に、担当の婦警さんに「かなり神経質に”ちゃんとサイフを届けたからな!必ず、持ち主に届けてくれよ!絶対だぞ!”と何度も念を押されていたので、きちんと連絡して下さいね。」と言われた。もう、そんな事を言われたものだから「どんな人なんだろう・・・」と少しビビリながら(笑)、菓子折りを買って、夕方だったが、早速、お宅に伺った。
 伺ってみると、御主人がちゃんといらっしゃった。私は「この度は、ありがとうございました。」と頭を下げた。「そうかそうか!よかったよかった!」と大きな声で自分の事のように喜んでおられた。すると、その次の言葉が予期せぬ言葉だった。「今まで、サイフを3回届けているのだが、きちんとサイフが届いたのはキミが初めてだ。」私は御主人のその言葉の意味がわからなかった。「届いたのは初めてってどういう事だ?」と心の中で思っていると、しばらくして御主人が「1回目はデパートでサイフ拾って、デパートの落とし物センターに届けたが、持ち主には届かなかった。2回目は君がサイフを落とした所と同じ某大学病院でサイフを拾い、大学病院の遺失物センターに届けた。これも持ち主に届かなかった。」とおっしゃった。
(Page.2へ続く)

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