「大人」 <おすすめBGM>"Shoot to kill" by GISM"
 その日は、山手線で品川に向かっていた。ちょっと講習があったのだ。池袋から乗車した時には、車内は空いていたので、そのまま空いている席に座った。
 しばらくすると、高田馬場、新宿、原宿、渋谷とどんどん混んできた。恵比寿に着くと、老夫婦が乗車してきた。渋谷でだいぶ乗客が下車したにもかかわらず、席は全て埋まっている状態だった。老夫婦は背筋は伸びているものの、白髪で見るからに私的には”席を譲りましょう!”の対象人物だった。(笑)
 案の定、私の前に来たので、気持ち良く譲ったつもりだったが、その老人は礼も言わずにドカっと座った。すかさず、携帯電話を取り出し、話し始めた。話が終わると、すぐさま、携帯電話の呼出し音が大音量でけたたましく鳴った。それでも、周りに申し訳なさそうにする訳でもなく話し始める。そんな事をのべ3回も繰り返し、同じ品川で降りて行った。礼も言わずに・・・・。別に礼を欲しくて席を譲ったのでもない訳だが、ガッカリしてしまった。なんで、こんな老人に席を譲ってしまったのだろう?と・・・・。自己嫌悪に陥る位にショックを受けた。老人だからと当然の様に座る事、礼もしない事、ドカっと座る事、携帯電話を車内で使う事、携帯電話の呼出し音を消しておく事もできない事、そばにいる奥さんも注意する訳でもなく当然の様にしている事・・・・。これが若い者の行動でなく、私の両親よりも年配であろう者の行動だという事がだ・・・。大人がこれじゃ若い者のマナーが良くなる訳がない。一緒に娘がいなくて良かったとすら思えた。
 「今の若い奴らは電車の中で携帯電話を〜」「今の若い奴らは席を〜」などと良く聞くが、さかのぼって考えてもらいたい。携帯電話を電車の中で話し始めたのは「大人」だ。席を譲らないのも最初は「大人」だったはずだ。詰めて座らないのも「大人」、隣に荷物を置いて席を占領するのも「大人」。話は車内からそれるが、タバコのポイ捨てを当たり前にしたのも「大人」だ。そうやって考えていくと、子供は大人の鏡だという事が良くわかる。「大人」が携帯電話を電車の中で電源を切る事、「大人」が席を率先して譲る事、隣の人とくっつく程詰めて座りたくないなら、座らなきゃイイ。座るからには1人でも多くの人間が座れる配慮をするのが「大人」である。タバコだって「大人」が率先して携帯灰皿を持ち、ポイ捨てをしなければイイ。私も100%完璧な大人ではない。でも競うなら「愛」にしたい。

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作:心