「都会の顔」

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 普段あまり近寄らない都会だが、用事がある場合は仕方がない。気持ち同様進まない足は遅れ気味であった。新宿での人の歩みはさまざまだ。急いでいるときなど、なんでこんなに人がいるんだとイライラし、その歩みの鈍さに行く手を阻まれる。でも大体の人は速い。よって否応なくそのペースに乗せられて早歩きとなってしまう。マナーもないに等しい。所かまわず地べたに座り込んでいる奴、最近は電車にも見られるようになった。周りも見てみぬふりをしている。誰も何も言わない・言えない、私もその一人。それも仕事なのだが、ポン引きやティッシュ配りの女の子、どうしてそんなに関わりたくないという人のココロを見透かすように近づいてくるのだろう。
 よけい目立つような気もするのだが、今日は自らペースを乱すことをしてみた。雑踏はニガテだ。そこにはうねるような人の波と、うずくまりまったく動かないブロンズ像のような人たちが同居している。動と静。陽と陰。光と影。どこにも一方があれば、必ずもう片方もあるといったものではあるが、その差が実に大きく、どちらの絶対数もかなりあるのが都会だ。やはり私は郊外に住むべきだろうと思う。
 そんな都会の顔や、奇異に見えるはずがもはや景色の一部とかしている托鉢の坊主を横目に、熱の太陽とかなり強いビル風に振り回され、ひとつのビルに入る。30分後、再びビル風の中にいた。意外なくらい用事は簡単に済んでしまった。相手と別れる際、「今日は暑いですか」と尋ねられ、「日差しは強いけど、風もあるんで平気ですよ」と答えたが、思いがけない時間の短縮がそうさせたのかもしれない。駅から紀伊国屋新宿南口店に向かう。ふるさと物産店が見られる歩道は好きな道だ。人の少なさとその分広々と歩けるせいで歩く人の顔もはれやかに見えるからだ。本店よりもかなり遠く、代々木駅に近いとこではあるが、それを補ってあまりあると考える。
(Page.2へ続く)

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