「鼻の話(第二回)」 <おすすめBGM>I WILL SURVIVE/by CAKE/in Fashon Nugget

Page.1


■■■■■■■■■■オースナポチさんからの意見■■■■■■■■■■

  世の中にはたくさんの匂いがある。そしてそれらを嗅いだ時の人間の反応にも、様々なパターンがある。人間は犬ほど嗅覚が発達してないが、それでもたくさんの匂いを嗅ぎ分けることができる。それらの中には心に直接作用するものもあるので、一口に『匂い』と言ってもそれを説明することは容易ではない。嗅覚は五感の中でも『無意識に感じる』という、言わば『裏』的な立場にあり、従ってその存在に疑問を持つ人がいてもおかしくない。しかし、鼻になんらかの疾患を持っていない限り、人は呼吸をするたびに匂いの粒子を吸い込んでいる。そしてそれは脳へと働きかけ、一体何の匂いなのか、危険はないのかを探っている。意識的にも無意識的にも、匂いは経験と学習によって様々な情報を脳に伝え、匂いを発している対象に何らかの評価を下しているのだ。
 人間は犬と違って視覚が発達しており、嗅覚に頼らずともそれなりに周囲を警戒することができる。社会のおかげで危険も少なくなったので、警戒そのものを無理にすることもなくなった。けれども嗅覚の利点は視覚に写らない小さなもの、形のないものを発見できるところであり、これは今の生活にも十分役立つものである。また心に直接作用するという点を生かし、匂いによって精神を安定させることもできる。最近新聞に載っていた『古代エジプトの眠りを誘う香料』は、不眠症の人に効果があるらしい。とはいえ、現在の社会が匂いを嗅ぐことに不適切であることは事実である。都会には排気ガスが舞い、どこもかしこも舗装されて埃が落ち着く場所がない。その上風の通りも悪いので、空気が澱んで鼻がすぐに汚れてしまう。室内では空調が利かされ、匂いはどこへ吸い込まれているのか、感じることは難しい。
 田舎暮らしの私には、匂いのない世界は不気味である。朝起きて窓を開け、空気を吸い込むと、風の向きと空気の匂いでその日の天気がわかる。雨がやってくることも分かるし、季節が変わったことも分かる。トイレに行って、うんこの匂いを嗅ぐことで自分が健康か、そうでないかが分かる。ごはんを食べる前に料理の匂いを嗅ぐと、その料理が安全かどうかを確かめることができるし、また匂いによって味を感じることもできる。バイト先で接客をしている時などにお客さんの匂いを嗅げば、その人が何の仕事をしているのか、どういった性格の人なのかを何気なく探って楽しむことができる。そしてお風呂に入って鼻の穴をきれいに洗い、自分の匂いを嗅ぎながら安心して眠るのだ。(Page.2へ続く)

<<<<TOP                  NEXT>>>>