「Bye bye my girl.(Part.1)」 <おすすめBGM>"We rule the school"/by "Belle and Sebastian"/in "Tigermilk"

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 1Fの販売機にレモンティを買いに行くとあの娘が数人の女子とダベっていた。人見知りをせず誰ともなく話せ、快活で物おじしない彼女はクラスの人気者だった。常に数人が取り囲んでいる。僕に気付いたあの娘はいつものようにいたずらな微笑みを浮かべさっきの授業いなかったねと話しかけてきた。高校生の頃テニスをやっていたと思えない彼女の細い足が視界に入りドキっとする。僕は顔が赤くなった事を悟られまいとうつむき加減で視線をそらしながら一番後ろにいたと嘘をついた。そんな嘘はあの娘は百も承知でうつむた僕の顔を覗きこませ執拗に何処へ行っていたのかを聞いてくる。僕の顔が赤くなったままなことすら見透かされているのではないかとドキドキしていると赤間がやってきた。赤間は僕と同じ高校の出身で予備校に入ってから今井を通じて親しくなった。赤間は僕や今井と違って授業に対しては真面目に取り組んでいた。僕や今井の持つ疑問に対しても理解は出来るがそれを同じように感じる事はなかった。赤間にあの娘の疑問に対する僕の答えの加勢を依頼すると確かにいたとエピソードまで添えて説明してくれた。赤間は調子合わせの天才だと常々思っていたがこの時は本当に自分がそこにいたと勘違いしてしまう程の熱弁だった。赤間の話がリアルさを失い大袈裟なものへ突入し始めると一同に笑いが起こりさらにまくしたてる赤間の横で僕は話を聞くフリをしながらあの娘のうすら赤くなった唇を眺めていた。化粧気のない娘だから多分リップだろう。肌の色が白い分ほのかな赤も際立って見える。この世界からその唇だけが隔絶されたもののように思えるほど崇高に見えた。今寿命と引き替えに守るものがあるとすれば牧歌的な風景でも世界遺産でもなくあの娘のこの唇だろう。この地方特有の強い風が窓の向こうの大木を大きく揺すっているのが見えた。結局あの娘にとっての僕の所在はどうでも良かったようだ。

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作:Grecoviche

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