「Bye bye my girl.(Part.3)」 <おすすめBGM>"We rule the school"/by "Belle and Sebastian"/in "Tigermilk"

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 壁には所どころに絵画、曲がり角には花瓶に花がさしてあり、大抵の公立高校と趣きが違ってどちらかというと私立の女子校を思わせた。まだ新しい建物の匂いが漂う。玄関から20m程先を左に90°曲がりさらに15m程歩くと図書室はあった。入り口には予想通りのカウンター。窓際には大きめの机が並び壁に沿って本棚が並んでいる。規律正しく並べたれた本から紙とインクの混じった独特の匂いが発せられている。僕は匂いに誘われるまま本棚に進み、今井はカウンター脇の別の棚を調べ始めた。卒業アルバムを見つけたのは鼻の利く今井だった。最新年度版からあの娘の住所を見つけ出すのもわけのないことだった。だが、書くものが見当たらない。僕がカウンターを調べていると今井はいいものがあると、入り口の脇にあったコピー機の電源を入れた。僕は音や光りを気にしたが今井の耳には届かなかった。「しまった」と今井が言った時は誰かに気が付かれたのかと思い逃げる体制に入ったが、10円玉を持ち合わせていない事に対しての言葉とわかると自分の臆病さに笑いが止まらなかった。100円玉を入れて住所をコピーった。予想したサイズに収まらなかったので縮小して取り直した。僕はこれで十分と思っていたのに今井はダメ出しをしてもう一度とろうと言う。今井は顔をコピー機にすりつけ複写した。コピー機が光る瞬間に「複写!」と今井は叫んだ。歪んだ顔が暗闇に浮かぶものだから僕は笑いをこらえきれず声に出して笑ってしまった。代わる代わる僕等は「複写!」した。その度に「複写!」と叫んだ。100円を使いきった。そのコピーの内、出来のいいものを選んで本の間に隠した。僕は孫文の自伝に今井は昆虫図鑑の間に挟んで閉じた。誰かが見つけた時を想像して笑った。来た道を戻る時も今井はライターの明りを度々灯しその際に「複写!」と言って僕を笑わせた。表に出てあまりの静けさに僕等はなんだか罪悪感を覚えた。自分達の犯罪まがいの行動を無言で街全体が抗議しているかのようだった。深夜というよりは早朝と言うにふさわしい時間になっていた。車に戻った僕等は地図と住所を照らし合わせて驚いた。彼女の家は本当にすぐそこだった。

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作:Grecoviche

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