「Bye bye my girl.(Part.5)」 <おすすめBGM>"We rule the school"/by "Belle and Sebastian"/in "Tigermilk"

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かなり近くまで来ていた。ある程度の番地になると地図には載っていない。今井は車を止め足で残りを探すことを提案した。もちろん他に方法のないことは解っていたが、僕はどおしても同意出来なかった。あの娘の家を見たところでこんな深夜に会えるわけでもない。あの娘を知りたい欲求は深夜の住宅街を行き場を無くして彷徨い始めていた。それ以上に怖かったのかも知れない。もしあの娘の家がとても貧相でわらぶき屋根だったら?もしあの娘の家が僕などとは身分の違う豪邸だったら?。あの娘への思いは変わらずとも態度に出そうな僕に自信がなかった。あの娘の服装からして貧しいとは判断しがたいが、もし無理をしていかがわしいバイトなどしたりして?心にないことを平気で口にしたりしちゃって?イヤイヤ、お嬢様だったら?ティータイムって観念が定着している階級の、白い大きな犬のいる家の、屋根のあるベット、紋の入った皿や純銀の食器?身分相応の交際相手は両親の決定権に委ねる部分が大きいとか?家に招かれて食事をしたら家族の方にもの珍しいげに質問されまくったり、それをあの娘が顔を真っ赤にして怒って「もう、みんないい加減にしてちょうだい。彼だって人間なのよ!」と吐き捨てドアを勢いよく抜けていき、残された僕はあの娘を追いながら「人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、人間なのよ、」と何度もその言葉の持つ価値観のズレを確認し、涙溢れ、あの娘の後を追うどころではなくなり?いや、その前に食事に招待だなんて想像とは言え、ちょっと度が過ぎた。その前に気がつけよ!あ〜〜イカンイカンとマンガのように一人で頭を叩く僕に今井は「あれやろうぜ」と促していた。
 両手を使った簡易ダウジングだ。まただ。ここまで来られた実績は認めよう。しかし油田堀りに一役買ったという話すらあやしいダウジングを己の両手で行うなどどう考えても無理がなかろうか?どう考えてもこの状況下ではふざけているとしか思えない今井の提案になんだか急に腹がたち、僕は「もう帰ろう」とだけつぶやいた。それ以上は言いたくなかった。形はどうあれ僕の為を想って全て行ってくれたことだ。感謝こそしても決して怒ってはいけない。そう思ったからだ。しかし今井は当然納得がいかず執拗に僕を引き留める。僕は黙ったまま煙草に火をつけた。そんな僕の体を揺らし今井は引き下がろうとはしない。(Page.2へ続く) 

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