「Bye bye my girl.(Part.6)」 <おすすめBGM>"We rule the school"/by "Belle and Sebastian"/in "Tigermilk"

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 あの娘とは何度も食事には行っていたが2人きりってのは無かった。静か目のイタリアンのお店に到着した僕等はおそめのランチを取った。あの娘とここに来るまで何人に見かけられた事だろう。噂になっちゃうかな?確かにあの娘はモテル。何人かに告白されたなんて噂もあった。でもステディな関係の男はいない。心に決めた人でもいるのだろうか?チキンソテーの脂身をナイフではずしながらあの娘はテニスの思い出を話し始めていた。僕がラケットを折った瞬間の事を大げさに話すとお腹を抱えて喜んでいた。あの娘が喜ぶ為だったら人殺しだって今の僕にはできるかも知れない。冗談交じりではありながら”決心”みたいなものが心に芽生えたのを感じた。食後のレモンティを飲みながら他愛のない談笑にふけっていると、あの娘は思いつめたように黙り込んでしまった。僕はタバコの煙の行方を追いながら、あの娘のそんな態度に気づかない振りをして何か話題がないか思いを巡らせた。だってあの娘の沈黙は一国を破壊するほどの強烈な寂しさを放ってるんだから。
「今井君って付き合ってる人いるの?」
え?「クミコがね、好きになっちゃったみたいなの?」なんだ良かった、君じゃないんだね。クミコさんは夏のテニスにも同行したあの娘といつも一緒にいる娘だ。あの娘とは対照的におとなし目で物静かな感じがある種の色気を漂わせている。「いるよ」と短く答えた僕にあの娘はため息交じりで「だよね…」と頭を抱えた。「そんなに深刻な事?今井は無理だよ、一筋だから」今井の事は良く知っていた。あいつは誰よりもマジメで誰よりも優しい。二股はもちろん浮気だってできるものか。「私もさんざん言って聞かせたよ、でもクミ真剣なんだ」諦めさせるのだったら簡単な話しだ。今井と彼女が一緒の所を見せればいい。僕の提案にあの娘は喜んで賛同してくれた。効き目の程は判らないが何もしないよりマシだ。そんな深刻に悩むほどの事でもないのにと思ったものの、あの娘には何も言わず「きっとうまく行く」とだけ伝えた。取りあえず、僕はあの娘と話す接点ができたんだ。キューピット同士が結ばれる確率はどこの発表にも載ってなかったが悪くないはずだ。でも今回はキューピットじゃないから何のデータにもならないけど、とにかくあの娘との接点は生まれた。
 窓の外で、北風にふかれた枯葉が空へと舞って行った。横断歩道を無理して渡ろうとした同じ年くらいのやつの運転手に怒鳴られているようだった。

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作:Grecoviche

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