「Bye bye my girl.(Part.11)」 <おすすめBGM>"We rule the school"/by "Belle and Sebastian"/in "Tigermilk"

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 次の日、僕は予備校に行かなった。しなかった後悔よりしてしまった後の後悔を選んだとは言え、どんな顔であの娘に会えばいいのか?どんな会話をするべきか?僕にはその術がわからなかったからだ。赤本にだって載ってない恋の参考書はコンビニで買える下世話な情報誌には多分あっただろう。だけどそんな本を手にした途端、あの娘への気持ちが踏みにじられるような気がしていた。僕にはどうする事もできなかった。ため息ばかりついた。身体から空気が無くなってしまうほどの息を吐いた。今井や赤間には風邪だと嘘を言ったが多分バレていただろう。
 人を好きになる時に男女に差があるという。男性はその女性の最初のオトコでありたいと思い、女性はその男性の最後のオンナでありたいと願う。僕はどうやら男性の容姿をしたオンナのようだ。あの娘との最後を切望していた。おすぎとピーコでなら多分ピーコの方だろう。意味はない。ただそう思っただけだ。久しぶりに自転車で出かけてみた。冬は四季の中で夕方が一番綺麗だと切に思う。張りつめた空気には不純物は感じられない。当てもなくただ走り出した自転車は綺麗な夕焼けには不釣り合いな建築物の中を右に左に進んだ。操縦不能になったセスナのような僕の心を自転車は街並みに描いていた・・・。
 翌日は意を決して予備校に行った。何事も無かったように振る舞っていたが、予備校の入り口に立った時には「人」と言う字を手のひらに書いてこっそり飲んだ。新興宗教の建物から出てきた人以外にはみられなかったハズだ。普段と変わらない校舎のハズが僕の中だけでおとといとはまったく違った場所になったような気がした。自分が見えていたモノですら日によって違って見えるのに、みんなと同じように一人一人同じに見えているのか心配してみたが頭が痛くなったので思考を止めた。今日、今井はいない。そしてあの娘と一緒の授業もない。赤間を捜してみたが入れ違いで帰ったようだった。模試の結果を受け取り成績にため息をつき、帰ろうとすると後ろから呼び止める天使の声がした。振り返るとあの娘がそこにいた。
 僕らは近くの喫茶店に入った。本当はこの前一緒にいったお店に行きたかったのだが、わざわざ遠くに連れ出す理由を探す余裕がなかったからだ。それに模試の結果が出たばかりで追い込みに突入していく回りの空気もあった。あの娘に「この間の事で話があるの」と言われた瞬間、その答えを理解した。あの娘の左手には指輪がなかったからだ。注文した僕のホットミルクとあの娘のエスプレッソが届くまでの間、あの娘はなかなか話しださなかった。思い詰めたあの娘の表情を見ていると僕はさらに悪い知らせを確信した。できるだけ普通にそつなく話題を選んで話しかけて、あの娘の気持ちをできるだけ後回しにしたかった。注文の品が届き一口なめるとあの娘が鞄からプレゼントを出して「受け取れないわ」と言った。今は勉強が一番で春まで恋愛はできないと言った。すごく嬉しかったと言った。泣きたくなった。2、3歳なら人目もはばからず素直に母親に大声で訴えていただろう。僕はあの娘が差し出したプレゼントを返して、「そういう意味じゃなかったら受け取れる?」と言った。(Page.2へ続く) 

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