「Bye bye my girl.(Part.11)」 <おすすめBGM>"We rule the school"/by "Belle and Sebastian"/in "Tigermilk"

Page.2

返されても使いようがないからと言った。それでもホットミルクの表面に張った膜を気にしながら飲んだ。あの娘は黙ったままだ。あの娘の願う将来に僕は含まれていない。僕の欲する今に完全な形で存在している未来が崩れ落ちていく。あの娘の今を考えるゆとりがなかった自分を恥じた。自分の欲求を大切な人に押しつけてしまった事を後悔した。立場に立っていない。その時はそれすらわかっていなかったのだろう。「この先の君が楽しい時はやそのほとんどの時は僕の事など忘れて構わない、けど悲しい思いをした時は先ず最初に僕の事を思い出して欲しい」と言って店を出た。
 入学式の一週間前赤間から呼び出された。恋に悩んだ受験生に志望校はやってこなかったが僕は東京の大学が決まっていた。今井も赤間もあの娘も決まっていた。年も明ける頃から予備校にはさらに行かなくなってたので、久しぶりの再会になる。今井とは志望校が一緒だったせいか何度か東京で会っていたが赤間とは本当に久しぶりだった。未成年である事をすっかり忘れていた僕らは会うなり祝杯を交わした。そして赤間からあの娘とつきあい始めた事を知らされた。僕とあの娘の間に入って相談を受けるうちに惹かれていったと赤間は言った。そしてこの場で殴って欲しいと言った。僕は一旦握りしめた拳をほどき、泣かせたら今度は殴ると言って店を出た。
 大学3年の冬に今井とスキーに行った。その晩、赤間があの娘と別れた事を知った。赤間から知らされた日、僕は今井に電話した。今井は深夜に関わらず車で迎えに来るといつもの夜景スポットにつれて行き朝までつきあってくれた。あの時迎えに来る前に赤間の家によって殴ってきた話もその晩初めて聞いた。
 歳を重ねる毎に少年期のように告白はしなくなっていくものである。お互いが傷つくことを恐れ、傷つかぬよう曖昧なうちにつきあい始めていくようになる。メスの前で求愛したり他のオスと戦う事は生物の進化の頂点に君臨する生き物にはそれ程必要ではないらしい。恋愛に限らず上手にズルさを身につけ成長を獲得していく。僕にとっても、あの娘にとっても赤間にとっても、そして今井にとっても人生において最後の告白だったかもしれない。(END)

ご意見、ご感想はこちらへ!! 

作:Grecoviche

<<<<BACK                  TOP>>>>